酒井順子、TIME、芭蕉、稲泉連

〈ソウルの表示と巻貝〉

 

前回のソウルのつづき。大統領弾劾のデモがある世宗路のそばにこんな巨大巻貝がある。一体なんだろうか。夜は隙間からライトが点灯。通りの表示は、ハングル、簡体字、日本語の三ヶ国。以前は日本語はなかった。日本人の観光客が多いのだ。空港でたくさん会った。隣国の爆買いのひともいた。

 

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〈顔の広告〉

 

広告は、タレントの顔が好き。顔を二つ並べたのが、同じ車両に三つも。中吊りと窓上。それに駅のホームのベンチの上。

 

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〈酒井順子さん〉

 

「週刊文春」3月30日号、「私の読書日記」の酒井順子さん。

書き出しは、〈一日中座り仕事をしていた日は、無性に料理がしたくなる。一心不乱に野菜を刻んだりアクをすくったりしていると、邪念が頭から消えてゆく。結果として食べたいものが食べられる喜びももたらされるわけだが、料理は現実からの逃避行為としても秀逸なのだ。

さらにもう一つの料理の効能は、自分が「ちゃんとした人」であると思うことができる、ということ。特別に手をかけた料理でなくとも、自分で作ったという事実が、ちょっとした免罪符のように思えてくる。〉このあと、料理についての本が四冊紹介される。

しめくくりは、〈夫は食道癌。腫瘍があるため、固形物は飲み込みにくくなってしまった。夫のためにお粥を用意し、ジュースを作る妻。誰かのために、何かを作るという行為はやはり美しい。そんな妻もまた、誰かが作ってくれた料理を食べた大きくなったのだし、彼女が育てる子供達もまた、大人になったら誰かのために料理を作るのだろう。〉

 

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〈Nothing to See Here.〉

 

またもやTIME誌(2月27日・3月6日合併号)の表紙をかざるトランプ。雑誌名の下、大統領の頭の上に「ここからは何も見えない。(Nothing to See Here.)」とある。ホワイトハウスの大統領執務室の机。左からの横殴りの雨と風。トランプの金髪が右になびいて、書類が散らばっている。絵はTim O’Brien。

 

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〈Is Truth Dead?〉

 

TIME誌4月3日号は、 Is Truth Dead?(真実は死んだ?)という文字のみの表紙。これですぐに何が特集されているかわかるからすごい。本文の記事の扉では、タイトルが「トランプは真実をさばけるのか?(CAN TRUMP HANDLE THE TRUTH?)」リードは、「偽りを押し付け、陰謀の飛沫をまき散らす大統領が、現実の政治の挑戦に直面する(A President who peddles falsehoods and dabbles in conspiracy confronts the challenge of governing in reality)」。嘘発見機の写真と、あえてタイトルを小さくしている。こんな表紙の週刊誌は日本にはない。

 

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さてわが方の「Is Truth Dead?」な状況。嘘をついているのは誰か。都合が悪くなると、すぐに手のひらをかえす。平気で嘘をつくひとがいる。それが国をあずかる政治家や役人。恥知らず。恥ずかしい気持ちがかけらでもあればやってられないのかな。

 

〈靴の穴〉

 

今履いているほとんどの靴の底に穴があいた。ずっとかわりばんこに履いていたけれど、ついにみんなへたばった。見ると、後ろの外側が減っている。どんな歩き方をしているからこうなるのだろう。穴があいたのはゴム底のもの。革靴は修理できるから、どれもみんな20年以上働きつづけてくれている。30年こすのもある。スニーカーのような靴のゴム底は直せないのだろうか。取り替えられたりするのだろうか。どの靴も上はまだまだ元気なんだけど。修理代金で新しい靴が買えるのかな(ネットで調べたら修理できる「シューグー」というのがある。試してみるか)。

 

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〈芭蕉〉

 

『芭蕉さん』丸山誠司・絵/長谷川櫂・選句と解説/講談社刊/A4変型か(左右190ミリ×天地210ミリ)・上製/2017年

 

絵本『芭蕉さん』が出来上がった。去年の6月、「人形町ヴィジョンズ」での『蕪村と一茶』展がきっかけ。俳句の絵本をずっと作りたかった。丸山誠司君が描く蕪村の絵を気に入った編集者のOさんに話すと、すぐに決まった。最初に、去年の9月にOさん、丸山君、うちの助手の赤波江春奈さん、私との四人で「奥の細道」の東北の旅、宮城、岩手、山形から新潟までを取材した。この東北の小旅行のことは、以前にこのブログに三回(10月14日、11月4日、11月16日)にわけて書いた。松尾芭蕉の俳句の解説と選句は長谷川櫂さん。

 

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〈本をつくる〉

 

『「本をつくる」という仕事』稲泉連/筑摩書房/四六判・上製/2017年

 

稲泉連さんの本。筑摩書房のPR誌「ちくま」での連載。本にたずさわるひとたちに稲泉さんがインタビューしている。光栄にも私もその一人にえらばれた。カバーはNoritakeの絵と描き文字(本の絵が不思議な形になっている)。仕事を探す若い人向けのような本のつくり。帯の〈こんなところにもプロがいた〉という文句に、友人の編集者が「本をつくる現場が〈こんなところ〉なのかよ」と嘆いていた。それにしても、このフレーズは別に本の現場でなくても、どこにでも使えるんじゃないの。

 

「本をつくる」という仕事

 

週刊文春(文春図書館/私の読書日記)で、鹿島茂さんがこの本を絶賛している。

〈入試監督・採点という大学教員の「宿命」が八日間ほぼ休みなく続き、疲労困憊。読書など不可能な状況だが、そうなるとかえって大量に本を買い込んでしまう。そして改めて思う。本というのは人類が生んだ最高の発明品なのではないかと。ところで、この発明品を支えているのが分業であるということはあまり意識されていない。この厳然たる事実を教えてくれるのが稲泉連『「本をつくる」という仕事』。〉

〈情報の媒体が紙から電子に代わろうとしている現在、モノとしての本に込められた人類の英知をもう一度確認するためのベストの本である。〉

 

「ちくま」では、荻窪の本屋さん「Title」の店主、辻山良雄さんがこの本について書いている。

〈一冊の本が自分の店に届くまでの長い物語を想像できるようになれば、入荷した本に対する本屋の気のかけ方も、自然と変わってくる。著者から読者へと続く一本の道の中で、最後に位置する本屋が出来ることは、自分が扱う本のことを少しでも知り、作り手の気持ちを汲み取るように丁寧に本を並べることである。入ってきた本をただそのまま置くということとは違う何かがそこには潜んでおり、それはその本が発する声をそのまま読者へと伝えることでもある。その本のしかるべき読者へ道を続けるには、本の作り手も売り手も、まだまだやることがあると感じた一冊だ。〉

 

この本で残念なことがある。第一章で、大日本印刷の秀英体の「平成の大改刻を取り上げている。それならプロジェクトの最高の成果である(と私は思う)「秀英明朝L」を本文に使ってあげればいいのに。読者にとってはよい見本になるはず。デジタルフォント初期に作られたイワタ明朝体オールド(R)よりはよいと思うんだけど。このイワタは本文用としては細すぎる。(初版の第六章に大きな誤植を見つけたが、増刷では直っているかな?)

 

〈SHMの数字と欧文書体〉

 

『日本人の9割が間違える英語表現100』キャサリン・A・クラフト/田中哲彦編訳/ちくま新書

 

久しぶりに写植のSHM(秀英明朝体)を見た。著者名のアルファベットの「A」と、この帯で見られる「!」が独特のデザイン。鈴木勉さんの手になるこの復刻版秀英初号は素晴らしいが、唯一これが気にっくわなくて、私は、感嘆符・疑問符・欧文は別の書体を使っていた。友人の元写研のデザイナーに訊くと、当時の会社の方針で、欧文や記号は秀英のエレメントを使ってデザインしたのだ。大日本印刷がデジタルで復刻した「秀英初号」の従属欧文は、ボドニみたいな書体になっている。

このジャケットでもうひとつ気になること。数字の「9」と「100」がちがうこと。デザインがちがうし、「100」のほうは長体(あるいは数字書体の全角三桁か)がかかっていて結果、「9」より「100」が小さく見える。背は狭いので仕方ないが、表側では100はもっと大きくできる。これでは「9割」のほうが「表現100」より重要に見える。機械的な和字と左右を揃えたのか。「100」を「9」と同じ書体にしても問題はないと思える。このデザインに疑問はなかったのか。

 

英語表現100

 

〈下北沢駅のエレベータ―〉

 

「はなし口」って何だ? 下の非常ボタンの指示は漢字入り。下のボタンを「押しつづけて」ここから「話す」のね。その下の「かいさつ」は平仮名。

 

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〈荻窪へ〉

 

新高円寺のメトロのサイン。階段に統一デザインのサインがあるのに、手前の柱に自前で出力した貼り紙をしている。「荻窪」と矢印の「方面」にわけて工夫をしている。日本の駅はこういう過剰な親切の貼り紙であふれている。

 

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今日の一曲はこれ。

One/Harry Nilsson