沢田としき、和田誠、エレベーター、John Prine

〈今日の犬〉
このワンちゃん、夷川通をブラブラしていて会った。はじめてUmweltに行ったときのこと

 

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〈夏帽子〉
帽子のお出まし。でも、出かけられない

 

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〈沢田としき〉
沢田としきが逝って10年たつ。4月27日が命日。前日の26日、interFMの「バラカンビート」を聴いてたら、彼のお兄さんが『ケセラセラ』をリクエストしていた。。生きていたら61歳。お兄さんは沢田のことを「ノーテンキな弟だった」とコメント。沢田くんとは、けっこういっしょに仕事をしている。ひとりでキューバやポルトガルに旅をする大胆な男。K2をやめたあと、しばらく六本木にある前の職場の向いのビルで小さな部屋を友人とシェアしていた。

 

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〈『蟻の自由』〉
「イラストレーション」6月号、特集和田誠。〈和田誠の「この仕事」(自分にとって印象深い和田さんの作品というお題)〉で、私はルイス・ブニュエルの肖像をあげた。ひろい世代のグラフィックデザイナーやイラストレーターで、少しでも和田さんの影響を受けていないひとはいないのではないか。
和田さんの作品で好きなものはいっぱいある。この特集にはない、私の好きな一冊はこれ。

 

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『蟻の自由』古山高麗雄著/文藝春秋刊/1974年/四六判(天地130ミリ×左右188ミリ)・上製・函入り/表紙は布装、パラフィン紙かけ/帯付き

 

函と表紙と別丁扉は和田さん。タイトルは手描き。
函の表から裏に絵がつながっている。水に浮かぶ、ちびた鉛筆。鉛筆の先と後ろを、こんな形に描いている。
裏側は石井細明朝体(LM-NKL/20Q/行間2分)で江藤淳の賛がある。函に推薦文が入っている。和田さんのデザインで他にこんな例はあるだろうか。元は帯が付いていた。参考のために文庫化されていたら、デザインを見ようとネットで見つけた。何はともあれ、まず検索すればいいのにね。いつものこと。この画像は、ブログ「表現急行2 文学と美術の研究ノート 古本日記/2018年1月20日」から。
帯は和田さんのデザインのような気がするが、1行目のキャッチコピー、仮名だけ文字サイズを変えるようなことをされるかな。帯の背と裏側はどうなっているんだろう。

 

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函は、天ぎりぎりに文字が入っている。その割に行間が広いのがアンバランス。背のタイトルがこれに呼応している。裏の文字は、推薦文と書籍コードと社名と定価。それらが下の左右の隅にまとめらている。色は少しあせているが、柔らかい色が気持ちよい。特色3色とスミ。和田さんの版下は原寸主義だから、この手描きの絵の版下に写植が貼りこまれているのか。函と表紙の背は共通。文字は函の表側と別丁扉は別に描かれている。この本は、表のほうの見返しが切り取られている。著者のサインと元の所蔵者の名前があったかな。

 

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本文は和田さんの手ではない。「あとがき」の冒頭。
〈四十六年「群像」九月号に「蟻の自由」を書いて以後の短編を、文藝春秋出版部の萬玉邦夫さんに一冊にしてもらった。〉
萬玉だ。奇しくも彼の本文デザインが、前回からつづく。
本文は活版。印刷所は精興社。目次、本文、奥付、広告は萬玉の技。端正で控えめなデザイン。
1頁目に目次扉=9ポ、全角アキ/左ページ。
次の見開き(p.2-3)は右が白、左に目次=9ポ、4字タイトルは3分アキ、それ以上はベタ。こういう流儀は活版の組みの常套なのだろうか。
その次は(p.4-5)、見開きの右に装幀クレジット=ノド寄り。9ポ、3分。左は本扉=12ポ。
p.6は白、p.7は最初の短編のタイトル扉。
p.8は白、p.9から本文が始まる。先頭は6行アキ。9ポ、1頁=41字詰め、17行。

 

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〈エレベーター〉
エレベーターのボタン。朝日新聞4月25日、土曜日の付録の連載「街のB級言葉図巻」で飯間浩明さんがエレベーターのドアの三角の図形の開閉ボタンのことを書いている。
〈この図形、どっちが「開」か「閉」か、私も時々分からなくなります。(略)それぞれ三角形の角の向きがドアの動く方向だと思われます。(略)私には、「▷◁」はチョウが羽を左右に広げた形に見えます。それでつい、これが「開」であるかのように錯覚するのです。(略)私も「◁▷」が「開」だと頭では理解しています。でも、閉まりそうな扉を開けようとして、反射的に「▷◁」を押してしまうことがあります。この図形、改善の余地がないでしょうか。〉
私もよくまちがえるので、気になっていた。そのたび、デザイナーなのにと恥ずかしくなる。
飯間さんは〈両手を開いた形で「開」、両手を合わせた形で「閉」なんてどうでしょう。デザイナーの皆さま、いかが思われますか。〉と最後に提案している。
〈両手を合わせた形〉は日本人には別の意味があるから難しいかな。漢字の「開」「閉」(私の仕事場のエレベーターのボタン)が、いいけど外国の人にはわかりにくい。「close」「open」を一緒につけたほうがいい。
ピクトグラムは、文字の代わりに誰にでもわかることが目的。
三角が間違いやすいなら、矢印がいいかもしれない。三角に少し首のついた矢印はどうだろうか。この写真の三角のデザインなら、「ひらく」の方は、三角の間を「閉」よりひろくするといいかもしれない。デザイナーにとっては、誰もが見てわかることと図形のスマートさも大切だろう。
われわれが使っているこの三角は、採用する前に慎重な実地テストをしているか。はたしてデザイナーが関与しているか。エレベーターの設計者たちが考えたものかもしれない。
掲載されている写真をよく見ると、「閉じる」と「開く」はボタンを囲む縁の形と色が違えてある。「三角」の向きだけでは無理と思っている。エレベーターでの状況を考えると、「三角」だけを見ているかもしれない。
これらの「三角」は、あまりスマートじゃない。デザインがきれいなら、わかりやすく使いやすいというはない。それでは困るが、かっこよくて機能的なものを考えたい。
参宮橋の病院と小田急代々木八幡駅、東西線早稲田駅のエレベーター。飯間さんのデパートはどこだろう。三角のデザインは同じ。そして、開くはみんな緑。病院のほうは、平仮名で「ひらく」「とじる」と点字、代々木八幡駅のほうは、点字と「ひらく OPEN」「しまる CLOSE」と2言語。早稲田は、ひらがなだけで文字が消えかかっているし、「とじる」のほうがよく消耗している。写真ではわかりにくいが、「ひらく」ボタンは、やはり緑色。
三角のこのデザイン(三角の中央に垂直のラインがある。早稲田はこれもうすくなっている)は、みんな共通している。JIS規格で決められているかと思い検索したが、なかった。

 

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〈今月の「シナリオ」〉
「シナリオ」6月号。森英二郎さんの木版画の表紙。メトロの中、スマホで見る『流れる』

 

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〈前回につづいて、John Prine〉
金森幸介君が大好きなJohn Prine。彼の曲の中で、幸介君が一番好きなのが”Speed Of The Sound Of Loneliness”。いい曲です。
2017年9月9日、彼にたのまれて訳してみました。

 

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The John Prine Anthology(RHINO/1993)のブックレットに載っているジョン・プラインのこの曲の解説。このベストアルバムには、全曲彼の解説がつけられている。

 

〈あの曲はすぐにできた。古い写真のことが頭にあったんだ(たぶん、雑誌の「ライフ」だったと思う)。50年代の宇宙飛行士の一人の顔が全部Gの力(G-force)で歪んでいた。人間関係の深刻な破局を通して、誰かの心が、「Gの力」であのように引き裂かれることを考えた。実は、この歌は、ルーヴィン・ブラザーズ(Louvin Brothers)の“Running Wild”という曲を、僕に思い起こさせる。その曲は、誰かが自分勝手にふるまって、孤独の音速を破ってしまったことが書かれている。〉

 

Speed Of The Sound Of Loneliness

 

孤独の音速

 

深夜家に戻り、朝早く帰ってくるあなた
自分を小さく感じると、大きく出るあなた
まっすぐ家に帰ったり、あちこち回って戻るあなた
ときにはまったく戻って来ないあなた

 

(コーラス)
そう、あなたは世界をどう感じているの
神に誓ってなにをしてきたの
孤独の音速をこえてきたあなた
ただ走るためだけにそこで走っているあなた

 

ほとぼりさめない焼きつくされた私の心
心配と嫉妬の私の心
どうすれば、愛は永遠につづくの
こんなに遠くに置き去りにされて

 

(コーラス)

 

とても卑劣、恐ろしいほどの悲しさ
最悪の一線をこえてしまった今日
明日はどうなってしまうのでしょう
言葉をなくしてしまったわたしとあなた

 

(コーラス)

 

〈散歩の途中〉
遠くには出かけられない毎日、散歩しながら、よその家の庭の花を楽しんでる

 

ハナミズキ

 

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ツツジ

 

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コバノランタナ(水をやっているおばさんに訊いたが知らなかった)

 

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あとは、両隣の家の庭のバラと、歯医者さんのバラ

 

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今日の一曲はもちろんこれ
Speed Of The Sound Of Loneliness/John Prine