脊柱管狭窄症、『蝉しぐれ』、「シナリオ」、磯田道史、ハナミズキ

〈page a day gallery calendar dog, april 20 monday 2020〉

 

IMG_6648_dog calendar_犬が犬_042020

 

〈脊柱管狭窄症〉

 

4月7日から、脊柱管狭窄症の手術のために入院していました。参宮橋脊椎外科病院の院長さん、主治医の吉田先生、看護師さん、理学療法士さん、X線・MRI・CTの技師さん、栄養士さん、配膳さん、お掃除係さん、お世話になりました。いい病院です。
病室の窓から代々木公園の緑が見えます。4月18日、雨の土曜日に無事に退院しました。しばらくはコルセットの生活ですが、手術のおかげで脚の痛みもなく歩いています。

 

病室の窓から代々木公園が見える。ずらっとならんでいるのは看護婦さんが勧めてくれた水分補給のOS-1

 

IMG_6628_窓から_041720

 

18歳で、デザイン事務所の見習いからずっと仕事をしてきました。71歳で、小学生のとき以来の入院です。外科手術は初めて。数年前に脊柱管狭窄症と診断されていたが、ひと月前、突然右脚が痛くなり、しばらくするとその痛みのひどさで歩けなくなったのです。無事にすむことはないとは思ってたが、新型コロナウィルスの騒ぎの最中に入院しました。

 

病院の屋上から新宿副都心が見える

 

IMG_6581_屋上_1_041020

 

IMG_6582_屋上2_041020

 

IMG_6583_屋上3_041020

 

入院した翌日の手術の日、大好きなJohn Prineが新型コロナで亡くなった。ウイルスのあほ! 何さらすねん。あっちでSteve Goodmanと会って二人で、みんなのために唄ってくれていると思いつつ、RIP

 

IMG_6651_John & Steve

 

The John Prine Anthology(RHINO/1993)とそのブックレット。左からジョン・プライン、スティーブ・グッドマン(1984年没)、マネージャーのアル・ブネッタ(2015年没)、1975年、アムステルダム。

 

〈タイポグラフィ的なもの〉
 

ブロック注射の注意書き。モデルは白髪でハゲのおじいさん

 

IMG_6609_ブロック_t_041320

 

点滴の歩行器の注意書き。オノマトペが多い

 

IMG_6577_歩行器_1_t_040820-tete

 

IMG_6578_歩行器_2_t_040920tete

 

IMG_6572_歩行器_3_t_040920

 

痛みのため、入院前に処方してもらった坐薬の注意書き。〈取り出し方〉と〈そう入のしかた〉。〈挿入〉と〈仕方〉はひらがなになっている

 

IMG_6650_坐薬t_

 

赤坂のシナリオ会館のプレート。新藤兼人さんの文字。美術担当から出発した

 

IMG_6051_シナリオ会館_プレート_t_021220

 

〈『蝉しぐれ』〉

 

ブログの49回目(2016年11月4日)で『一茶』のブックデザインについて書いた。それ以来の藤沢周平、谷澤美智子、萬玉邦夫の装幀本(ただしクレジットは〈装丁 谷澤美智子〉とある)、『蟬しぐれ』。京都嵯峨嵐山の「ロンドンブックス」で見つけた。どこにでもありそうな本だが、なかなか出会えない。本気で探さない、やり方がまずい、気ままだから。
ネットで、文藝春秋刊の萬玉・谷澤コンビの「藤沢本」を調べる。『回天の門』『密謀』『未刊行初期短編』『隠し剣弧影抄』『隠し剣秋風抄』『秘太刀馬の骨』。
やはり『一茶』と『蝉しぐれ』のデザインが頭抜けている。この二冊の間には10年の間隔がある。ジャケットのデザインはどんなプロセスか。谷澤の書を萬玉が自由に構成しているはず。文字の大きさやレイアウトは、ジャケットや扉のサイズに彼女が合わせて書いてはいないだろう。
この本のジャケットは、パラフィン紙につつまれている。元の装幀にパラフィン紙がかかっている記憶。

 

1988年刊/四六判(131ミリ×191ミリ/大きめ)/並製/カバー装・表紙雁垂/天アンカット/本文活版/印刷は精興社

 

《カバー》クリーム色の紙。表1は、タイトルと著者名が左右いっぱいに、文字は紺色。地をあけている。背のタイトルは、両側にはみ出す。背のタイトルは表1とは別に書いている。著者名と社名は他の部分と同じ。背の文字の込み具合が、表1のデザインと呼応している。
表4は、文藝春秋の社名が大きく入って、その下に、価一三〇〇円とある。〈価〉ですよ。地でISBNコードが横に受けている。表紙は背のみ文字。《見返し》本文に出てくる、詩経国風の漢詩が書かれている。グレーに文字白抜き。

 

IMG_6656_蝉しぐれ_1

 

IMG_6657_蝉しぐれ_2

 

IMG_6659_蝉しぐれ_3

 

《別丁扉》横の方向に細かい皺のある紙「ぬのがみ」。カバーの文字を再構成。文字は紺色。《目次》目次扉は、かなで〈もくじ〉のみ。目次は見開き2頁。目次のそれぞれのタイトルは、字間をあけて天地揃え。文字サイズは少し大きい。12ポ。もっとこじんまりしたほうが上品。左右のアキは狭くはないが、文字サイズを下げて行間を広くすればゆったりする。《本扉》タイトルのみ。文字サイズ16ポ、大きい。

 

IMG_6660_蝉しぐれ_4

 

IMG_6661_蝉しぐれ_5

 

IMG_6662_蝉しぐれ_6

 

IMG_6663_蝉しぐれ_7

 

《本文》9ポ、1頁43字詰、20行、440頁(27.5台)、行間2分。小ぶりな精興社活字とはいえ、行間はちょっと狭い。全体で440頁だから、1行減らしてこれ以上頁を増やすことはできなかっただろう。本文のマージンは、地より天が広い(天から34ミリ、地から22ミリ)。柱とノンブルは上にあり、ノンブルはイタリック。柱の文字は全角アキ、左頁でノンブルと1字分のアキしかない。ノンブル、柱と本文のアキは2字分だが、この組み方はノーマル、天のマージンの広さの役割がわからない。
本文のタイトルの文字は大きい。二分アキ。2字の場合は全角アキ。巻末の初出と奥付と広告。奥付が極端に頁の下にある。コンパクトに組まれていて、次頁の広告もふくめてデザイナーの美意識を感じる。これは右頁の初出と下が揃っている。だから、この奥付の極端さが成立している。最終頁の「藤沢周平短編傑作選」の広告の活版の組は見事。

 

IMG_6664_蝉しぐれ_8

 

IMG_6665_蝉しぐれ_9

 

IMG_6666_蝉しぐれ_10

 

IMG_6667_蝉しぐれ_11

 

〈「シナリオ」誌〉

 

「シナリオ」5月号(発売中)は南伸坊さんの「本人(勝新太郎)」(撮影=南文子さん)と、4月号の表紙は丹下京子さんの伊佐山ひろ子(『濡れた欲情』)です。南さんは2月号でクリント・イーストウッドの絵を描いていただき、これで二回目。丹下さんは伊佐山さんのファンで、一度、彼女を見たことがある。色っぽい。南さんの勝新、かっこいいです。
デザインは絵に合わせて変えている。思いつくことを試す。こだわらないことをめざす。岡澤さんが作ったロゴの書体、仮名もあるとみんなが使えるかもしれない。このロゴは、同一書体でプロポーション(細・太・平・長)にバリエーションがあってとても面白い。

 

IMG_6638_シナリオ4,5月号0220_041820

 

〈ラジオでこんなこと言ってた 3/山下達郎・サンデーソングブック/4月12日〉

 

「えー、非常事態宣言が出されました。それに対して色々な声があります。普通に社会生活を送っている人にとって家にこもって外に出るな、また、中小の経営者にとって店舗の営業の自粛をせよという、今の状況に対して不安のない方々はひとりもおりません。怒りのない方だってひとりもおられないと思います。みんなじりじりした気持ちです。それを口にしたい衝動をみんなかかえています。政治の不甲斐なさ不明確さ、いつものごとく官僚の責任意識のあいまいさ、行政の拙速さ、企業の保身、メディアの的外れetc. etc.
私のような年齢になりますと、一体、裏でなにがうごめいているのかと、いろいろと想像がふくらんでしまいます。こういう現状の中で生まれる、数々の不条理への戸惑いとか、鬱憤、苛立ちを抑え切れずに、あるひとはそれをネットに噴出させ、あるひとはメディアを使ってぶちまけています。そうしたい気持ちは痛いほどわかります。私だって想いっきり怒鳴りまくりたい衝動があります。でも、そんなことをしてもウィルスがなくなるわけではありません。毎日、毎日メディアに登場する、細部をつついては批判と罵倒に明け暮れている、そいうものがどれだけひとびとの不安を煽っているか、なぜ、もっと寛容な建設的な言動、行動がとれないのか、不思議でなりません。私はそうした政治的な言説にはあまり深く立ち入らないようにつとめているんですけれども、でもまあ、今一番必要なのは政治的利害を乗り越えての団結ではないかと思います。
今、政治的対立は一時休戦して、いかにこのウィルスと闘うかをこの国のみんなで、また、世界中のみんなで助け合って考えなければならない時です。なんでも反対、なんでも批判の政治プロパガンダはお休みにしませんか。責任追及とか糾弾はこのウィルスが終息してからでもいくらでもすればいいと思います。
再三再四申し上げているように、こういう時は冷静さと寛容さがなによりも大事です。静かに落ち着いて物事を語りましょう。正確な判断は冷静さからしか生まれません。
過酷な現場で働く医療スタッフは、みんなそれぞれの思いを持ちつつも、黙々と闘っていらっしゃいます。スタンドプレーのメディアピープルじゃなくて、そういう医療従事者のみなさん、見えないところで人知れず働く方々に想いを馳せましょう。彼らを励まし、もり立て、われわれはわれわれの出来ることをいたしましょう。今は、出来るだけ他者との接触を避け、感染の広がりを防ぐ努力をいたしましょう。というわけで、このサンデーソングブック、音楽番組ですけれども、こういう状況の中でどういうような番組構成をするかとか、非常にまようところなんですけども、それでもあくまでこのサンデーソングブックのリスナーのみなさまのためにですね、番組をつくっていきたいと思っております。」

 

サンデーソングブック

 

〈磯田道史〉

 

3月6日の朝日新聞で、歴史学者の磯田道史がこんなことを語っている。
〈今から約100年前、スペインかぜが大流行し、当時の日本の人口の1%近くが亡くなりました。1回パンデミックになると、思ったより暴れるというのが一つの教訓です。加えて、国民の「移動」と「密集」が、確実に死者を増やしたこともわかっています。
当時のことを、与謝野晶子が「感冒の床から」という文章に記しています。子どもが小学校から伝染してきたと。そして「盗人を見てから縄をなうというような、日本人の便宜主義がこういう場合にも目に付きます」とも。100年前も、後手に回る対応への批判があったのです。
それではなぜ、日本人は歴史から学ばないのか。「考えたくないことは、起きないことにする」という習慣があるからです。「もし××だったら」という反実仮想の習慣を日本人は戦国時代以来、退化させてきました。前年と同じことが予定調和に起きる緻密な水田農耕を続け、親の言うことを聞く人のDNAを受け継いできたからだと思います。
こういう人たちは、型どおりにやれというのは得意ですが、型が決まっていないことをやるときは泥縄式になってしまいます。
そして病気は、普段は隠されているすべての欠陥をあらわにします。世襲の政治家にどの程度のことができるのか。奇才を大臣に登用して先手を打っていく台湾との落差は明らかです。政治家が悪いのではなく、こうした政治家や政府を登場させられない我々の社会とは何なのかを考えなくてはいけません。〉

 

IMG_6654_磯田

 

前回、今日の一曲のBill Withersが3月30日に81歳で亡くなった。コロナじゃなくて心臓が悪かった

 

IMG_6652_Bill Withers

 

メトロ東西線の早稲田から仕事場まで10分。春は、まず辛夷、次は桜、そしてハナミズキとツツジの順に花が咲く

 

IMG_6641_ハナミズキ_041920tete

 

IMG_6643_ツツジ_041920tete

 

今日の一曲はこれ。ランディ・ニューマンの名曲。家にこもって聴いたウィリー・ネルソンの2008年のカバー
Louisiana/Willie Nelson