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〈美術館にクロークをお願いします〉
ルカス・クラナーハ展の国立西洋美術館内で見た看板。日本の美術館には、なぜ、海外では当たり前のクロークがないのだろうか。あちらでは小さなバッグ以外、リュックのような大きいものはあずけさせられる。クラナーハ展では、子供は歩かせて、自分たちの荷物をつめたベビーバギーを押しながら鑑賞している親子がいた。クロークがあればあずけられる。ここで美術館の客にたいする気持ちがわかる。クロークならば、係のおじさんやおばさん、あるいはおねえさんとコミュニケーションができる。狭くて淋しいコインロッカーはだめだ。この看板には「大きなお荷物、重たいお荷物以外はお手持ちください」と書いてあるが、そんなに大きなコインロッカーはない。世界遺産の国立西洋美術館なんだからがんばってほしい。入り口にある、あのコルビジュエの建築のファサードに似合わないカギ付き傘置きは、クロークがあればなくせるじゃないか。六本木の国立新美術館は入り口に、エントランスより偉そうにしている紀章先生デザインの専用傘置き場がある。なんだあれは。

 

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〈トランプ〉

「アホ!」「何やて!」「アホ!」「何がアホやねん!」「お前はアホじゃ!」「どっちがアホやねん、アホ言う奴がアホじゃ」子供のときのののしり合いの最後はこれになる。さんざんトランプを馬鹿にして、彼をアホやと言っていたこちらも相当なアホだと思う。他所さんの国の他人事ではない暗い気分にさせられる。アホな世界が充満してくる。感情的になりすぎか。こんな単純なことではない。世界が分断されていることが、さらにあらわになった日。

 

伊野孝行君にトランプを描いてもらった。三点も描いてくれた。

 

トランプ1

 

トランプ2

 

トランプ3

 

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〈灘本さん〉
森英二郎さんが、自身のブログMEXOS-HANAXOSで灘本唯人さんの思い出を書いていた。60年代のデザイナーには関西出身のひとが多い。田中一光、横尾忠則、早川良雄、黒田征太郎、長友啓典、山城隆一、永井一正など。伊野孝行君と丹下京子さん、霜田あゆ美さんが灘本さんの絵を描いてくれた。ちなみに、彼らは灘本さんから顔もおぼえられていなかったという。個人的には、灘本さんから60年代と70年代のお話をきちんと聞いておきたかった。残念だ。

 

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〈オリンピック〉
このブログは7月は1回だけ、ついに8月はさぼってしまった。そして、9月になってしまった。7月の二回の選挙の投票率のこと(宮崎県西米良村は参院選で投票率91.13%だ)を書こうと思っているうちに、オリンピックが始まった。東京オリンピックには大反対だけど、見てしまう。開会式の演出は、『シティ・オブ・ゴッド』のフェルナンド・メイレレス。シンプルでよかった。聖火がぶら下がるアイデアがおもしろい。その後ろの太陽のような動く彫刻も怪しくてよい。誰だろう。隈研吾はどうするんだろう。音楽もよかった。テレビの解説は、なぜブラジル音楽の詳しいひとをゲストにしないんだろう。盛り上がるのに。閉会式でブラジルのこどもたちがアカペラコーラスで唄った「君が代」に聴きほれる。東京のプレゼンテーションは、渋谷の交差点とマリオのイメージ。今の日本はゲームなのか。それにしても、新聞やテレビの毎日のメダル騒ぎは、はしゃぎ過ぎ。

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「TIME」はアメリカの週刊誌。最新6月27日号の表紙。これはオールランドの犠牲者の名前。グラフィックなデザイン。「TIME」は表紙だけでなく、本文のデザインもしっかりしている。もちろん写真は素晴らしいし、インフォメーション・グラフィックもよい。タイポグラフィも水準が高い。日本の雑誌、週刊誌とはくらべものにならない。この表紙は強い。TIMEに限らない、The New York Times、the guardianを見ても、まず写真が、そしてタイポグラフィが優れている。グラフィックデザインが活かされている。平面のページで、動画に出来ないやりかたがあることがわかる。それが気持ちよい。

 

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大阪の実家の片付けをしていたら、前回に書いた75年のロス・アンジェルスからバークレーまで、I君こと石田長生君と砂川正和君と私の三人の珍道中の写真を見つけた。往路か戻りかわからない。休憩途中の町だ。L.A.とS.F.の間は、5号線で一本道。これはモントレーあたりだったかもしれない。私のポンコツのシェヴィがオーバーヒートしないように、木陰でボンネットをあけてエンジンを冷やしている。三人並んでいるのは、左から私、砂川君、石田君。この写真は誰に撮ってもらったのだろうか。車を止めたところにいた町の人だろうか。覚えていない。私が地図をひらいて、その場所を指差している。こんな写真ではどこだかわからない。

 

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7月8日、長年会っていなかった古い友人で、ギタリストのI君が亡くなった。食道がん。1975年、私が住んでいたロス・アンジェルスのアパートにやってきた。ウィリー・ミッチェルやアル・グリーンのHi Soundに憧れて、メンフィスへ単身で修行に行く前にしばらく泊まっていった。メンフィスでは、アン・ピープルズとドン・ブライアント夫妻の知己を得た。70年代から80年代にかけて親しかった友人である。私より3歳下。

 

私の運転するオンボロのシボレー・シェヴィ(60年代に、アメリカがコンパクトカーを作った頃の車。デザインを調べたら、多分シェヴィII  ノバSS 1966)で、彼とともにサンフランシスコの対岸のバークレーへ行った。今は亡き砂川正和君も一緒だった。免許を取ったばかりで、初めての長距離ドライブ。大阪の雑誌の「プレイガイドジャーナル」が組んだツアーで、夏休みだから部屋があいているUCバークレー校のドミトリーに知り合いがたくさん泊まっていた。そこでうちの奥さんに初めて会った。彼女は、私の友人の女性にさそわれてこのツアーに参加していた。

 

南條竹則さんから、ご自身が書いた『吾輩は猫画家である ルイス・ウェイン伝』を送っていただいた。集英社新書ヴィジュアル版。

 

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不気味なポスターだ。奇妙なゴシック体で、あまり感心しないコピーがブルーの抽象的な画像(TVCMだと筆で描いている動画が出る)をバックに配されている。筆のストローク。具体美術の白髪一雄さんの作品を使うとか、あれを真似てやってみるとか考えなかったのかな。白髪さんは筆じゃなく足だけど。

 

「保険は冒険から生まれた」

 

何、それ? 保険と冒険では対立する考えではないのだろうか。〈冒険〉のために〈保険〉をかけておきなさいということか。このゴシック体は仮名の太さにばらつきがある。エレメントの先端の角が少し丸い。直線の両方の先までが極端な広がり。写植期の書体をまねているように見えるが、これほど極端なのものはなかったかもしれない。

 

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『Ah-hA to Zig-Zag』マイラ・カルマン/Cooper Hewitt/上製/ジャケットなし/ページサイズ:217ミリ×280ミリ/2014

サブタイトルは、31 objects from Cooper Hewitt, Smithsonian Design Museum

 

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マイラ・カルマンさんの新しい絵本。基本はABCブックだが、まともなアルファベットの本ではなく、工夫があるので面白い。2014年12月に改装が終わった、Cooper Hewitt, Smithsonian Design Museumのコレクションの中から31点を、AからZまでのイニシャルで紹介している。
扉には、「マイラ・カルマンがこの博物館に行きました。彼女が、コレクションから好きなものを選んで、あなたのためにこの本をつくりました。すべてあなたのために。」と書かれている。

 

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今年からイラストレーションを始めたという、37歳の女性から電話がきた。作品を見てくれというひとは多い。いわゆる〈持ち込み〉(この言葉があまり好きじゃない)。今年の5月頃までは、できるだけ見せてもらうようにつとめていたが、最近は一切ことわっている。私は絵を見るだけではなく、彼らとイラストレーションそのものについて話すことにしている。しかし、若い人にはなかなか話が通じないのだ。

 

話していたら、彼女が「朱に交われば赤くなる」という諺を知らないというのでびっくり。イラストレーターは国語ができないとね。本が好きでなかったらこの仕事は無理(それでも絵を描いている野蛮なひとが多い)。この程度の諺がわからなくては、社会人としても話にならぬ。ましてイラストレーションをの仕事をするなら、小説やエッセイ、雑誌の記事などを相手にするのだからどうするんだろう。

 

さてさて、「好事魔多し」われらが田中将大投手が右ひじの靭帯部分断裂でDL入りで、6週間のリハビリ。スプリットは肘にこたえるらしい。しかし、それは大リーグの迷信だという元投手もいる。ほんとうの原因は何なのだろうか。

 

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